起床と就寝の繰り返し

起きている間にやったことの記録

猫なでるじじい

もうすぐ昼寝するかな、という2歳の子どもを抱っこして池袋の駅を歩いていたら、広いスペースで猫の雑貨を売るイベントをやっていた。目立つ場所には象徴的に大きな猫のぬいぐるみがある。

子どもが見たいというので近くに寄った。眠い時の子どもはわがままで、要求を断るとすごい勢いで泣くので爆弾を抱えているような気持ちである。その子どもがぬいぐるみを触りたいというのだけど「手を触れないでください」というプレートがある。こうなると気持ちは爆弾処理班である。優しく、触らずに猫を鑑賞する良さを教える。この言い方がダメならこの言い方、と一本一本コードを切っていく。

そんな繊細な作業をしている隣で、じじいが猫を触り始めた。あまり強い言葉は使いたいくないのだけど、これがくすんだ灰色の服を着て歯がなさそうな口元をした、じじいと呼ぶにふさわしいじじいだった。そのじじいが、ぬいぐるみの猫の喉をさわさわしている。目の前に「手を触れないでください」のプレートがある。呆気にとられる爆弾処理班と、一層触りたくなり騒ぎ出す爆弾。

よりによってなんで子どもに見えるように触るんだと思ってじじいをキッと見ると、ニヤニヤしだした。あ、こいつは分かってやってるんだな、と思った。理由は分からないけど子どもの触りたい気持ちを刺激して、我が家に不和をもたらそうとしている。どうしたらいいか分からず一瞬頭が真っ白になったが、横にいた妻が「あっちにも猫がいるよ!」と子どもの気を引いて、なんとなくその場から離れることに成功した。

遠くからじじいを見たら係員さんに怒られていた。

その場では本当にうんざりしたけど、こういう話はあとで人と話して盛り上がるので、結局じじいには感謝している。