背筋が「ソワッ」となった
ドトールに行った。レジが並んでおり、僕の前は恐らく一緒にテスト勉強に来た女子高生2人組だった。わちゃわちゃ注文をしている。僕はそれを意識の遠くで聞きながらぼんやりしていた。その日買った本を公園で少し読んでいたのだが、本格的に集中して読みたくなって近くのドトールに来たのだ。公園は桜が満開で花見客がみんな幸せそうで最高であった。
とにかくここ最近で自己最高のぼんやりを記録した頭でレジに並んでいた。
「次の方注文どうぞ」
店員さんのこの声でハッと我に返り
「ブレンドコーヒーのSサイズ」
と言った。
するとそのすぐ後で前に並んでいた女子高生がケーキセットを注文し始めた。店員さんも女子高生の方を見てレジを叩いている。
背筋が「ソワッ」となった。僕の番ではなかったのだ。前の女子高生たちと店員さんと、後ろに並んでいる方たちは僕の声が聞こえたのだろうか。全員聞こえないかのように普段の営みを続けている。
誰も気がつかなかったのかもしれない。ぼんやりしていて出したつもりの声が出ていなかったのかもしれない。しかし恥ずかしさのやり場がないので「変な顔」をしていた。顔面から、溢れる負のエネルギーを放出させていたのだ。
女子高生の注文が終わってお金のやりとりになるとすぐ、別の店員さんが遠くから注文を聞いてくれた。また背筋が「ソワッ」となった。普通、あんな遠くから注文取らないだろう。行列を待てずに苦虫を噛み潰したような顔をしているクレーマーと思われたのかもしれない。違うのだ。恥ずかしくておどけてしまっただけなのだ。
弁解することもできないのでなるべく大人しく大人しく過ごして隅っこで本を読んだ。
ぼんやりしていてはいけないということだ。