牛乳の白さはどれほどのものか
風呂上がりに牛乳をコップに注いでハッとすることがある。
そのあまりの白さにである。
こんな白いことってあるの?!
大丈夫?と思う。
栄養があり、飲むと背が伸びるとまで言われる牛乳。
すごく頭の悪い考え方だが、そんなにたくさんの栄養が含まれているのなら、色のひとつぐらいついていてもいいような気がする。
だが注いでみると驚きの白さである。
それもなんだか「深さ」を感じる白だ。
「色がない」「薄い」という意味合いで白と言われることもあるが、牛乳にはしっかり「白」という色がついている感じがする。
学級会なら、「文化祭でやる出し物はカフェかお化け屋敷か」でぼんやりと「どちらでもいい」と言うのが前者の白で、大きな声ではっきりと「何も意見はありません!」と宣言するのが後者の白だ。
言ってることは同じだが、後者には学級会や文化祭に対する憤りが感じられる。
生き生きした、生命力に満ちた白だ。
この牛乳の白はどれだけ白いのか、色々なものと比べてみることにした。
…卵の方が白い、気がする。。
色々なものと比べて牛乳の圧倒的な白さを示そうと思ったのだが、卵と並べるとぼんやりした白さに見える。
あのハッとした風呂上がりの時間はなんだったのか。
牛乳でこれなんだから、風呂上がりに卵見ていたらあまりの白さに目が潰れていたのではないか。
牛乳黄色いのかな…。
クリーニングに出したシャツと牛乳でも、シャツの方が白く見える。
更にその後ろのクローゼットの扉も、牛乳以上に白いではないか。
消しゴムは割と灰色かな?
比べるのに迷ったら、パソコンのソフトで色の情報をみれば明確な差が分かるのだが、写真を撮った時の当たってる光の色や影のつき方で数値が全然違ったものになる。
そこで今回は、僕が写真を撮る際に見た印象で白さを評価している。
消しゴムの白さはなんとなく表面上の白さ、という感じがした。
本当は他の色なのに白を塗ってごまかしている感じだ。
牛乳の白にはそういったところがない。
奥の深い生粋の、生まれながらの白だ。
ハンドソープ白い!
自分以外を白く(きれいに)しようとしている物体は意識から違う。
しかし、これは作られた、人工的な白さだ。
牛乳の生き生きした白さの魅力、というものもある。(牛乳が思ったより白くなかったので評価の仕方を変えています。)
シェービングクリームもなかなか白い。
だが質感というか雰囲気が牛乳の白さに近い気がする。
クリームだからか。
そうめんよりはぜんっぜん白い。
牛乳。
圧勝である。
そうめん黄色い!
「白」へのやる気が感じられない。
一度アタックで洗ってやろうか!
…本当はこういうことがやりたかったのだが他のものがあまりに白いので、白のハードルを下げてそうめんに来てもらった。
来てもらっておいてこんなことを言って申し訳ないとは思う。
家の中のものでは難しいようなので、上野動物園に来た。
雲といい勝負の白さ。
会いに来たのは、白い動物の代表、シロクマ(ホッキョクグマ)である。
「名前に白を冠する割に黄色い」でお馴染みのこの子になら牛乳だって勝てるだろう。
と思っていたのだが、泳ぐばかりでなかなか陸に上がってこない。
シロクマの全身と牛乳を比べたいのだ。
暑いかもしれないが頑張って欲しい。
ぼんやり見ていたらそのうちご飯の時間になった。
飼育員の方が肉や魚を投げ、シロクマが口でキャッチしている。
取りづらい場所に投げ入れられた魚を、穴から顔を出して上手に取るシロクマ。
最高に愛くるしい。
餌の投げ方により陸にも上がってきてくれるシロクマ。
牛乳と比べるチャンスなのだが、暑い中懸命に働いておられる飼育員の方が気になってしまう。
自分の大事な動物を牛乳と比べられるってどんな気分だろうか。
自分だって、娘がいたとして、「色が白くてきれいですねえ!」→「牛乳と比べてもいいですか?」
とか言われたら「はあ!?」と言うだろう。
そんなことを考えてもじもじしていたのだが、なかなか餌やりの時間が終わらない。
シロクマは水から出たり入ったりを繰り返している。(水に飛び込む瞬間のシロクマが撮れた。)
飼育員の方には申し訳ないが、こっそり牛乳と比べさせてもらおう。
撮れた。
なんか…
シロクマなら圧勝かと思ったが、同じぐらいに見える。
屋外で見ると牛乳って色が変わるのか。
じゃあ家でシロクマ見たらハッとするほど白いのか。
アナウンサーの安住紳一郎さんがラジオで、「世の中は自分が思うよりワンダーにできている」と言っていたことを思い出した。
(憎たらしいほどに可愛いうごきをするシロクマ)
牛乳の白さを誇示する結果はなかなか得られない。
ひょっとして牛乳の銘柄が悪いのではないか。
牛乳の中でも白くない牛乳を使って、他の白と戦わせてしまっているのではないか。
盲点であった。
東大生にだって落ちこぼれはいるし、働きアリにだって怠け者はいる。
箸でパスタを食べさせる店もあるし、全裸で家事をする主婦だっている。
青色発光ダイオード!(珍しいものを列挙しています。)
というわけで、牛乳同士で白さを比べることにした。
そのチャンピオンと、他の白を戦わせればいい。
最初にこれをするべきだったのだ。
この5種類の飲料を、それぞれ透明なコップに注ぐ。
同じだ!
大体同じ!
強いて言えば「しっかり濃厚4.4」が色が明るいような気がするが、「強いて言えば」レベルである。
同じ~♫
戦隊ヒーローだったら、全員リーダー格でいいだろう。
全員「牛乳レッド」だ。
同じぐらいのホワイトさを持つ牛乳レッドが5人。
途方に暮れてしまった。
牛乳同士では優劣がつけにくい。
仕方がないので戦いはこれまでにして、ここまでの白さの順位を決めてみよう。
僕が惚れ込んだ白さを持つ牛乳には、是非健闘してもらいたい。
白さの判定方法は下記の通りである。
▪️今まで印象的な白さを見せた10選手がエントリー。
▪️各々の写真から、その選手の白さを象徴していると思われる箇所を正方形で切り取り、チップを作る。
▪️そのチップを白い順に並べて、順位を決定する。
(ここまで紹介しなかったが、「白」を冠する選手として、アイスの白熊とシロフクロウにもお越しいただいた。シロフクロウは写真を撮ろうとすると、責めるような目でこちらを睨んできた。)
そして、休日の朝にスズメの鳴き声を聞きながらチップを並べた結果がこちらである。
左に行くほど白い。
つまり優勝はハンドソープ!
牛乳は5位であった。
ダントツ1位かと思っていたので正直残念ではあるが、上の4選手の顔ぶれを見ると仕方がないような気もする。
並みの白さで太刀打ちできる相手ではないのだ。
そしてあんなに写真を撮ったシロクマは最下位、ポッと出てきたアイスの白熊は8位、シロフクロウは6位と、ダークホース的存在の活躍が大会の盛り上がりを後押ししてくれた。
今日から白い動物といえばシロフクロウである。
最下位のシロクマは今日から「シロ」の字を剥奪、毎日アイスの白熊とそうめんを食べてハンドソープの海を泳いでもらう。(嘘だ。この大会にそのような権力はない。)
とりあえず結果が出たので以上である。
これからは牛乳を見てもハッとしない。
大して白くないのだから。
でもシロクマはハッとするほど可愛かった。
白さだけでは計れないものが、この世界にはたくさんある。
(最後に、上野動物園の楽しい思い出を振り返ります。これは、きれいに並んでお客様にケツを向けるゾウ。ボイコットでしょうか。)
(お客様にケツを向けるパンダ。ボイコットでしょうか。)
(パンダと牛乳も比べたのだが、なんだかよく分からない写真に。)
(帰り道で見た、「動かない」という芸を披露するヘブンアーティストの方。3Dプリンタで作った人形みたいだった。この暑さの中、こんなファッションでいるだけでもすごいと思った。)